三国志の人物には字がついていますが
字を付ける文化はいつの時代からあったのですか?また字をつける文化はいまでもあるのですか
礼記(らいき)は、周から漢にかけて、
儒学者がまとめた礼に関する書物を、
戴聖が編纂したものですが、
この中に、
【字(あざな)】は、
成人になったらつけられるという規定があります。
春秋戦国時代の人物にも字(あざな)は見受けられますので、
周前期(紀元前1000年頃)には、その風習があったものと思われます。
現在では「字」を付ける習慣は無いそうです。
『禮記.曲禮上』
「男子二十冠而字」「女子十五笄而字」
つまり男子は二十で加冠して字をもらい、
女子は十五で加笄して字をもらうということです。
加冠は、日本で言う烏帽子、
加笄とは日本で言う髪結いの儀式です。
成人式ですね。
これより男は髻を結って冠をつけ、
女は髪を結って簪を挿すことになります。
字は通常、家長ないし族長、
または地元の名士が烏帽子親みたいに付けたといいますが、
劉備や諸葛亮などは、付けてくれる適当な人物がいなかったからか、
自分で付けたという話を聞いたことがあります。
古代の字のつけ方には、数種類のパターンがあります。
一応の決まりがあるといわれます。
①同義反復:名と字の漢字が同じ意味をもつパターン。
例えば孔子の弟子の宰予は、字を子我。「予」と「我」は同義です。
諸葛亮は諸葛「亮」字「孔明」。
「亮」も「明」もともに「明るい」という同義です。
②反義相対:名と字が正反対の意味(対になる)パターン
例えば、晋大夫の趙衰(減少の意味)は字子余(増多の意味)、
唐の王績は字無功。
三国では、呂蒙が字子明。蒙は暗いという意味です。
③連義推想:名と字の一字がいわゆる連想語となっているパターン
例えば、趙雲は字子龍。「雲」と「龍」です。
水滸伝の公孫勝の二つ名は「入雲竜」。
龍は空を飛び、空には雲があります。
関羽は字雲長。「羽」と「雲」ですね。
張飛は正史では益徳ですが、
演義で翼徳になってる理由も伺えます。
「飛」と「翼」の方がしっくりします。
④書物の一節から:老子などの有名な書物から抜き出すパターン。
有名どころで言えば、劉備がいます。
劉備の字は「玄徳」。
これは一説によると、『老子』からとったのではないか、ということです。
『老子』
生じて而も有せず、為して而も恃まず、
長じて而も宰さず、是を玄徳と謂う。
また、『朱子語類』を読んでいくと、
「玄」は「真」であるという一文があります。
ちょっと飛躍して考えてみると、
「玄徳」=「真徳」。(天子になるべき)真の徳を持ってるのは自分だぞ、と、
暗に示してたのなら、
劉備の聖人君子的な面以外の裏の顔が覗けますね。
例で言えば曹操もまたこのパターンになるようです。
『荀子.勧学篇』
生くるも是に由り、死するも是に由る。夫れ是を之、徳操と謂う。
曹操の場合は名の「操」に合わせて
孟「徳」とつけたこの説が有力ですね。
あと諸葛亮も、このパターンにも含まれます。
『説文解字』
亮,明也。段注:“古人名亮者字明。”
「亮、明なり(段注:古人の名亮は字明)」ここからとって、
ついでに頭に「孔(おおいに)」をつけて、
「諸葛亮、孔明」となったわけです。
また、古に名が「亮」で字が「明」であった人物がいるとも記されています。
諸葛亮のことなのでしょうか。
同じく『説文解字』に、
瑾瑜,美玉也。というのもあります。
「瑾瑜は美玉である」。
この二文字を使っているのが、周瑜、字公瑾です。
この逆のパターンが、
呉の文官諸葛亮の兄の諸葛瑾、字子瑜です。
⑤排行
排行とは、同氏族内で同世代には共通する一字をつける、
などの法則のことです。
1)兄弟の順序をあらわす漢字を頭に、兄弟で同じ漢字をつける。
有名な「伯仲叔季」です。「孟仲叔季」の場合もあります。
日本で言う所の太郎次郎三郎です。
司馬懿の兄弟・「司馬八達」は、
上から順に
伯達(朗)、仲達(懿)、叔達(孚)、季達(馗)、
顕達(恂)、恵達(進)、雅達(通)、幼達(敏)
2)兄弟の順序をあらわす漢字を頭に、兄弟で違う漢字をつける。
「伯仲叔季」の法則を用いながらも、
下の漢字は名優先にして、兄弟で違うタイプです。
有名なのは呉の孫堅の息子です。
伯符(策)、仲謀(権)
ここでは同義反復を用いています。
【策】竹簡をひとまとめにしたもの(冊書)。文書。天子の命令「政―」。
【符】竹などでつくり、文字を刻んで二つに割り、
証拠としてもつもの「割―」、天子の勅命「―命」
【権】ハカる。計画を立てる。
【謀】はかりごと。
策も符も竹製の書くものですし、
謀と権は権謀という単語があるくらいです。
3)兄弟で共通の字を頭に、下は違う漢字をつける。
袁紹の子どもは頭に皆「顕」がついてます。
曹操の子どもも全員「子」がついてます。
「庶の長は孟と称す」とも言われます。
ここから鑑みれば、
曹操は実際正妻の子ではなく妾の長子、
と読み取ることもできます。
ただしこれは可能性があるというぐらいで、
受け取ってください。
曹操ファン倶楽部に殺されます。
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